研究内容
細胞分子薬理学研究室では、細胞増殖・分化・細胞死などの様々な細胞応答の制御機構に関する基礎的研究に加えて、がん・炎症・肥満・筋萎縮・中枢神経疾患・脳傷害などの病態を分子レベルから個体レベルで解析し、さらにこれらの病態と老化との関連性を解き明かすことにより、新たな治療薬・治療戦略・健康寿命延伸法の確立を目指しています。具体的には、以下のような項目について研究しています。
1. がんや炎症応答を制御する新たなミトコンドリア機能の解明
ミトコンドリアは、エネルギー産生に加えて細胞死や炎症応答などの様々な細胞機能を制御する重要なオルガネラです。当研究室では、ミトコンドリア電子伝達系が、新しいメカニズムでがん細胞の抗がん剤感受性や炎症応答を制御する可能性を見出しており、現在、その全容解明を進めています。さらに、分子薬理学的手法を用いたミトコンドリア機能調節による、がんや炎症応答を制御する新たなミトコンドリア機能の解明を目指した研究も進めています。
2. ベージュ脂肪細胞や脂肪毒性の解明による抗肥満薬の開発
ベージュ脂肪細胞は脂肪を燃焼し肥満抑制作用をもつ脂肪細胞です。当研究室では、生体内でベージュ脂肪細胞を誘導する化合物を特定し、現在、その誘導メカニズムと抗肥満薬としての可能性を検証しています。また、過剰な脂肪による細胞毒性(脂肪毒性)のメカニズム解明も進めており、脂肪毒性の制御に基づく抗肥満薬の開発も目指しています。
3. 老化による筋萎縮のメカニズム解明と骨格筋再生による治療法の開発
老化による筋萎縮は、筋力低下による活力や社会性の低下を招き認知症などの深刻な合併症を引き起こします。現在、当研究室では、細胞骨格とエピゲノム変化の視点から老化による筋萎縮のメカニズムを分子レベルで解析しています。これまでに、細胞骨格やエピゲノムに関する化合物が骨格筋再生を促進することを見出しており、老化マウスを用いて筋萎縮の治療効果を検証しています。
4. グリア細胞の活性化制御機構の解明
ミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞は、健康な状態において脳環境の恒常性を維持する細胞として機能しています。中枢神経系疾患時では、それぞれが相互作用することで神経傷害性や神経保護性など多様な反応を示すことが知られています。本研究では、グリア細胞間の相互作用によって生じる様々な活性化状態の制御機構を探索し解明します。
5. アストロサイトの機能分子を標的とした脳傷害に対する新規治療薬の探索
脳傷害は、脳機能を著しく低下させてしまう致命的な病態であるにも関わらず、現在までに有効な治療薬は確立されていません。脳傷害の悪化および回復には、脳内に存在するグリア細胞の一種であるアストロサイトが重要な働きを担うことが知られています。本研究では、脳傷害モデルマウスおよび培養アストロサイトを用いて、アストロサイトの機能分子に作用する薬物の脳傷害に対する治療効果および分子メカニズムを明らかにします。
